日常生活において私たちが口にする固形物には、栄養に欠かせない成分が含まれます。
食事によって体内に取り込まれた栄養素は、消化器系の働きによって分解され吸収されており、これは豊富な成分を配合しているサプリメントにおいても同様です。
今回は、サプリメントを活用するうえで知っておきたい、栄養素が体内で分解・吸収される仕組みを、基本から解説していきます。
消化とは
消化とは、吸収を促すために、体内で食べ物が分解される過程のことです。
体内では、必要な栄養素を消化し分解した後に吸収し、不要なものは体外へ排出されていきます。
食べ物や固形物に含まれる炭水化物やタンパク質、脂肪といった成分は、内臓や消化器系の働きによって、それぞれ糖類・アミノ酸・脂肪酸やグリセロールなどに分解されて吸収されます。
消化器系は、「消化管」と「消化線」で形成されており、以下のように分類される形です。
● 消化管・・・全長9mほどで、口腔から大腸まで繋がっているもの。
● 消化線・・・唾液線や胃線、腸腺など。
消化の種類
消化には、主に「化学的消化」「物理的消化」「生物的消化」の3種類があります。
化学的消化
消化液(唾液・胃液など)に含まれる消化酵素の機能で分解する過程。
物理的消化
咀嚼やぜんどう運動によって固形物を小さく砕く過程。
生物的消化
腸内細菌の機能によって分解する過程。
ただし個々の過程で完結するわけではありません。
基本はそれぞれの消化が相互に影響し合い、食物を分解して吸収しやすくなるために大切な役割を果たしています。
栄養素が体内で吸収される仕組み
摂取した固形物の栄養成分はという消化・分解・吸収の過程を、概要として確認したうえで、消化管ごとに詳しくみていきましょう。
消化の仕組みの概要
食べ物や固形物を摂取し、体内で吸収されるまでにかかる時間はおおよそ9時間かかります。
吸収されず不要となった固形物の排出は、大腸部分で約18時間以上滞在。
食後24時間かけて体外へ排出されるのが基本です。
細分化した栄養に必要な要素は、消化管壁から吸収。
そのほかの多くの要素は、小腸の絨毛を通して吸収されます。
摂取した栄養素が吸収されていく過程や役割・機能は、消化器官によって様々です。
たとえば固形物は、口腔から食道・胃(おおよそ0.5m)を通り、小腸(6~7m)から大腸(1.5m)を通る過程で吸収され、最後に不要なものが体外へと排出されていきます。
咀嚼による消化(口腔・食道)
固形物の場合、まずは噛み砕くことで細分化し消化しやすくしていきます。
このとき、つばの中に含まれる消化酵素「唾液アミラーゼ」の機能で、でんぷんが分解されます。
口腔内で細分化された固形物は、食道を通過し胃へ運び込まれる形です。
胃液の分泌で分解(胃)
胃に運び込まれた固形物は、筋肉の収縮によって徐々に振動を伝える動き(ぜんどう運動)に加え、胃液と合わさり細分化・均質化する形で分解されます。
胃液は「胃酸(塩酸)」・「ペプシノーゲン」・「粘液」を含んでおり、それぞれ働きが異なっています。
酸性を含む胃液には、固形物の腐敗を防止する働きがあります。
ペプシノーゲンは胃酸と混じることにより、タンパク質の分解を促進していく作用を持つペプシンに変化。
粘液は、胃の中が酸性によって痛むのを阻止する作用を持ちます。
胃の中では、食べ物を分解するために、様々な成分を分泌・混じり合わさることで、消化を促し吸収へとつなげる仕組みになっています。
なお、胃で消化された食べ物は、一気に十二指腸へ運び込まれるわけではありません。
いったん蓄蔵し、ゆっくりと時間をかけて送られる形です。
内容物の要素を分解・吸収・排出(小腸・大腸・肛門)
小腸ではまず、すい臓と胆嚢が繋がっている臓器の十二指腸で消化・吸収が行われます。
十二指腸では、消化液が分泌されるだけではありません。
すい臓・胆嚢それぞれの分泌液で、消化を促していきます。
消化酵素を含むのは、すい臓から分泌される「膵液」です。
一般的に三大栄養素と呼ばれる「糖質」・「脂質」・「タンパク質」は、すい臓から分泌される「膵液」によって分解が促されます。
胆嚢から分泌される「胆汁」には、脂肪の分解をサポートする働きがあるのです。
十二指腸で分解された食べ物は、「空腸」・「回腸」へと向かいます。
ここでは、分泌される腸液と小腸の動きにより、炭水化物は「ブドウ糖」へ、タンパク質は「アミノ酸」へと分解がされていく形です。
小腸の内壁部分には、無数のひだで覆われている絨毛があり、分解された栄養素は、絨毛で吸収されます。
絨毛で吸収できなかった栄養素や内容物は、大腸へと運び込まれるのです。
大腸には直腸と呼ばれる部分があります。
直腸の粘膜部分では、粘膜を通して水分が吸収され、固形物は便となり排出される形です。
粘液(粘膜部分から分泌される液)は、消化酵素を含んでいない代わりに、数百種類にも及ぶ腸内細菌があります。
この腸内細菌の働きにより、消化しきれなかった固形物の分解・発酵が促されていくのです。
最後に、消化されず吸収されなかった固形物は、不要なものとして肛門を通り、外へと排出されていく仕組みとなっています。
各栄養素は体内のどこで吸収される?
それぞれの栄養素が体内のどの部分で吸収されていくのかについて、詳しく見ていきましょう。
体内では、運び込まれた先の内臓や消化器系それぞれの機能によって、分解され吸収されていく成分は異なっていきます。
消化器系のどこか一部で栄養素が一気に体内に取り込まれていくのではありません。
時間をかけてゆっくりと体内の各器官で吸収されていくのです。
口腔から胃・小腸・大腸と体内の下へと向かっていく過程で、固形物は小さく分解され、それぞれの消化器系の動きや分泌される消化酵素の機能によって、必要な要素が体内へと取り込まれます。
でんぷん
でんぷんは、白米をはじめ、主食を中心に多くの食品に含まれる栄養素です。
体内へと摂取されたでんぷんは、口に含み噛み砕くことで分泌される「つば」によって分解を促進されます。
唾液の中に含まれる消化酵素「アミラーゼ」の作用により、でんぷんが分解され体内へと吸収されていくという仕組みになっています。
タンパク質
タンパク質は、肉・魚・大豆などに多く含まれる栄養素です。
口腔から摂取されたタンパク質は、まず胃へと運び込まれ、小腸を通って大腸へと向かっていきます。
各消化器官にて細かく分解される過程において、胃液のような消化液の働きにより分解され、消化しやすいペプチドやアミノ酸へと変わります。
最終的には水と二酸化炭素に分解されるか、糖新生に使われるものがほとんどです。
体内へと摂取されたタンパク質は、主に胃で分解されると考えられています。
胃液の消化酵素である「ペプシン」がタンパク質の分解を促す効果を持つからです。
糖分
小腸で吸収された成分や要素は、血管を通過し肝臓へと移行されます。
でんぷんから分解された糖分は、肝臓で「グリコーゲン」へ変化し蓄積される形です。
蓄積されたグリコーゲンは、血液中の糖分が減少した場合に、再度糖分へと変化し、血液に戻されていく機能を保有しています。
肝臓には、体内にある有害な物質を無害へと変化させていく働きがあるほか、古くなった赤血球を破壊することも働きとして持ち合わせています。
破壊された赤血球は、胆汁へと変化し、十二指腸へと運び込まれていく形です。
そのほかの栄養素
胃・小腸・大腸において、それぞれで吸収されていく要素は異なります。
体内に摂取した固形物の要素は、それぞれの消化器系で必要なものだけが吸収されていくのです。
たとえば胃の中では、アルコール分の吸収が促されます。
十二指腸では、水溶性ビタミン(ビタミンB12以外)、脂溶性ビタミン、脂質、鉄、カルシウムが吸収される形です。
空腸では糖質とアミノ酸が、回腸ではビタミンB12が、大腸では水分が吸収されていきます。
サプリメントと吸収の基本
サプリメントに配合されている栄養となる成分は体内でどのように吸収されていくのでしょうか。
ここでは基本を見ていきましょう。
食物とサプリメントの吸収の仕組みは同じ
これまで、体内に摂取した食物の栄養成分がどのように消化・分解され、吸収されていくのかについて紹介してきました。
実はサプリメントに含まれる栄養素も、食物に含まれる栄養素と吸収の仕組みは基本的に同じです。
食物における固形物などと同様に、胃の中や腸内で吸収され私たちの細胞へ取り込まれていきます。
ただしサプリメントは栄養摂取に特化したアイテムのため、食物と違って摂ろうと思えば特定の栄養を大量摂取しやすくなっています。
また吸収の仕組みの基本は同じでも、製品によっては食物よりも体内に吸収されやすいサプリメントも存在します。
サプリメントに栄養摂取を頼りすぎることなく、バランスの良い食事とあわせて活用するのが前提です。
サプリメントと腸内環境
サプリメントの効果を発揮するには、体内環境、特に腸が正常に働いているかどうかが重要です。
なかなかサプリメントの効果を実感できない場合、体内の内臓の機能が悪化しているかもしれません。
どれだけたくさんのサプリメントを摂取していても、効果的に消化や分解・吸収されなければ、不要な栄養素として体内へ排出される可能性もあるでしょう。
また、胃の中が荒れている状態でも、効率よく吸収されることができなくなる可能性があります。
サプリメントを摂取する際には、体内で取り込んで終わりではなく、胃や腸の働きを良好にできる食生活にも気をつけることが大切です。
なお、サプリメントの効果が発揮されにくくなる原因にはさまざまなものがあるため、違和感を覚えたらすぐにかかりつけの薬剤師に相談することをおすすめします。
サプリメントの吸収を高めるポイント
サプリメントの栄養素を効果的に吸収するためには、いくつかのコツがあります。
ここでは体内における吸収の仕組みをふまえ、効果的な摂取の仕方を紹介しましょう。
摂取する時は常温の水で
サプリメントを摂取する時は、水が基本です。
中には、お茶やコーヒーなどと一緒に摂取する方もいますが、お茶にはカテキンが含まれており、コーヒーにはカフェインが含まれています。
これらの成分は、栄養素を体内で吸収する際に妨害する作用を引き起こす可能性があるため、おすすめできません。
栄養素の吸収の妨げにならないように、常温の水と一緒に摂取するようにしましょう。
1日に摂取する目安量を厳守する
早く効果を実感したいからと言って、目安になっている摂取量以上を取り込むことはやめましょう。
サプリメントには商品ごとに1日の摂取目安量が決まっています。
たとえばNMNサプリメントの「Refeelas」は、1日分目安を3粒としています。
3粒にブロッコリー6.5kg相当(※ブロッコリー100gあたりNMN2mgで計算)のNMNが配合されている形です。
摂取量を守って取り入れるようにしましょう。
継続することが大事
サプリメントは、薬と比較すると即効性が低いことが一般的です。
あくまで食事の栄養補助が目的のため、そもそもすぐ効果が期待できるわけではなく、継続して摂取することで効果を実感しやすいという特徴があります。
飲み忘れを防止するためにも、毎日摂取する時間を決めておくなどし、習慣化できるよう工夫すると良いでしょう。
まとめ
今回は、サプリメントに配合されている栄養素がどのようにして体内に吸収されていくのかについて、分解・消化・吸収の仕組みを紹介しました。
食べ物やサプリメントなどの栄養素は、胃や腸内で分解・消化されることで、体内に吸収することができるようになります。
ですが消化器系の働きが正常に作用しなければ、せっかく摂取する栄養素も取り込むことができません。
まずは日々の生活環境を見直し、体調に違和感が無いかチェックしてみましょう。
#サプリメント #栄養素 #消化の仕組み
執筆者・監修者
株式会社CloudNine
代表取締役 島本 倖伸氏
真の健康と美しさを目指す企業として、株式会社CloudNineを創業。NMNの食薬区分の改正に合わせて、同年6月にいち早くNMNサプリメントのRefeelas(リフィーラス)を発売。累計出荷本数20万本以上と、国内におけるNMNのリーディングカンパニーの一社として、数多くの臨床研究を積極的に行っている。NMNサプリメントにおいて日本初の機能性表示食品となった「Refeelasサプリメント」、スキンケアの「Refeelasオールインワンジェル」を販売。NMNをブームから文化にしていくために、NMN製品の臨床研究を積み重ねている。
共同研究者
近畿大学農学部応用生命化学科
准教授 澤邊 昭義氏
1991年近畿大学大学院工学研究科応用化学専攻博士後期課程修了(工学博士)。1991年米国マサチューセッツ工科大学 博士研究員、1993年近畿大学 農学総合研究所 助手、講師、助教授を経て、2000年近畿大学准教授(農学部)。 専門分野:生物環境学、生命資源化学。研究略歴:様々な植物から有用性物質の探索を行い、食品、化粧品へ応用した実績を持つ。近年は、機能性表示食品へ応用可能な新規関与成分の探索研究も実施中。