NAD+とは?NMNとNAD+の関係を解説

NAD+は、体内のエネルギー生産に大きな役割を果たし、筋肉のパフォーマンスにも影響を与える物質です。

私たちが身体を動かしたり、健康を維持したりするにあたって重要なものと言えます。

つまりNAD+やその前駆体であるNMNを理解することは、自身の体力や活力を維持し、最大限に引き出すための鍵となるのです。

本記事では、NAD+の働きや生成過程、さらには健康やパフォーマンスへの寄与について分かりやすく解説したうえで、NAD+を健康的に増やすヒントを紹介します。

NAD+とは?

NAD+は「ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド」の略で、これは補酵素の一種として知られています。

生物の体内で広く分布していて、特に酸化還元酵素と結びつくことで、基質からの水素原子を受け取り、水素を伝達する重要な役割を果たすのです。

私たちの体内でエネルギーを生み出すためには、ATP(アデノシン三リン酸)という物質が必要で、その生成にはNAD+が不可欠です。

つまり、NAD+は生きていくために欠かせない成分であり、糖質を分解してエネルギーを生み出す過程や、壊れた遺伝子の修復を行う場面で活躍します。

生成には、アミノ酸の一種であるトリプトファンやビタミンB3(ナイアシン、ニコチンアミド)などが用いられる形です。

NAD+とNADの違い

ケースにもよりますが、「NAD+」と「NAD」は同じものを指していると考えられることが多いです。

もう少し具体的に説明すると、これらの表記の違いは、それぞれの化学的な状態をより正確に表現するためのもので、それぞれが同じ成分を指しているのです。

この表記中の「+」記号は、NAD+内に存在する窒素原子が正の電荷を帯びている状態となります。

この場合の「NAD」は略称です。

なお「NAD」と言ったときに、電子伝達体としてNAD+(酸化型)とNADH(還元型)の両方を含めたものを指す場合もあります。

NAD+は、その性質により酸化型として分類される物質です。

さらに水素原子(H)を受け取ることで還元型のNADHになる形です。

NAD+のはたらき

NAD+はわたしたちの体内でとても大切な役割を果たしています。

詳しく見ていきましょう。

エネルギー生産におけるNAD+

それぞれの細胞が適切に機能するためには、エネルギーの供給が欠かせません。

私たちの体の活動に必要なエネルギーのほとんどは、栄養素の分解とエネルギー分子の生成によって生み出されます。

そこで今回は、このエネルギー生産過程において重要な役割を果たすNAD+について解説していきたいと思います。

体内におけるNAD+の役割

細胞内では、NAD+は糖や脂肪といった栄養素を分解し、その過程で生成されるATPというエネルギー分子に変換します。

この過程でNAD+は電子や水素イオンを受け渡し、酸化還元反応を促進します。

これがNAD+がエネルギー生産に関与する主な方法です。

ただし、NAD+の役割はエネルギー生産だけではありません。

DNA修復や細胞分化といった細胞の機能にも重要な役割を果たします。

これにより、私たちの身体が健康に機能するために必要な多くの過程を助ける存在となっています。

NAD+の分解と合成のサイクル

NAD+は細胞内で、絶えず分解と合成のサイクルを繰り返しています。

エネルギー生産の過程で、NAD+は電子や水素イオンを受け取ることでNADHという還元型に変わります。

その後、このNADHは電子伝達系という一連の反応で、電子や水素イオンを酸素に渡し再びNAD+に戻ります。

このサイクルにより、細胞はエネルギー生産を持続することができます。

さらに、NAD+は細胞内で新たに合成されるだけでなく、食事から摂取したナイアシンやトリプトファンといった前駆物質からも生成されます。

これにより、私たちの体はNAD+の供給を維持することができます。

NMNとNAD+の関係

ここではNAD+と、その前駆体であるNMNに注目します。

これら2つの成分がどのように関わり、私たちの健康にどう影響するのかを詳しく見ていきましょう。

NMNとは何か?

NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)は、ビタミンB3の一種であるニコチンアミドから生成される物質です。

私たちの体内でNAD+へと変換されることから、NMNは「NAD+の前駆体」に分類されます。

なおNMNとNAD+は、ともにサーチュイン遺伝子の活性化に影響する物質でもあります。

NMNがNAD+に変換される過程

NMNが体内でNAD+に変換される過程を詳しく見てみましょう。

まずNMNは酵素により一部のリン酸基が除去され、ニコチンアミドリボシド(NR)へと変わります。

さらにNRからさらにリボースが除去され、ニコチンアミドに変化。

そしてニコチンアミドからNAD+が合成される形です。

NMNはNAD+の生産を促進し、NAD+はNMNの活用を調整します。

細胞内では、これら2つの物質がバランスを保ちつつ、体の様々な生理機能に影響を与えます。

NAD +と加齢

身体のすみずみまで届くエネルギーは、私たちの日々の活動をサポートし、生命を維持しています。

そして、このエネルギーの生成に欠かせない成分が「NAD+」なのです。

しかし、このNAD+は加齢とともに減少し、その結果、私たちの身体にさまざまな影響を与えます。

ここではNAD+と加齢の関係について探っていきましょう。

年齢とともにNAD+のレベルが低下するメカニズム

年齢を重ねることによって、NAD+を生成する酵素の一つであるNAMPT NAMPT(ニコチンアミドモノヌクレオチドリン酸アミド基転移酵素)の活動が低下します。

これが、NAD+の量が減少する一因となります。

さらに、NAD+を分解する酵素であるCD38の活動が増えることで、NAD+の量はさらに減少します。

このCD38の活動の増加は、細胞の老化や炎症などが原因となることが明らかになっています。

つまり、NAD+の量が減少する原因は、主にNAMPTの減少とCD38の増加という2つの要素によるものだと考えることができます。

NAD+の低下が引き起こす体の変化

体内のNAD+が減少すると、エネルギーの生産が滞り、細胞の機能が低下する可能性があります。

この結果、さまざまな健康問題を引き起こす可能性も考えられるのです。

対して、NAD+の量が適切に保たれていると、エネルギー生産はスムーズに行われ、身体の機能は適切に働く傾向にあります。

つまり、NAD+の量が適切に保たれていないと、身体の機能が低下し、健康維持が難しくなる可能性があります。

ただし身体の健康はさまざまな要因により維持されるため、NAD+の量だけで判断することはできません。

NAD+の増加により期待できる効果

NAD+は、細胞のエネルギーを生成する過程で重要な役割を果たします。

したがって、NAD+の量が増えると、細胞のエネルギー生成能力が高まりやすくなり、体全体の機能の向上が期待できるのです。

また、NAD+はDNAの修復を助ける作用も持っています。

DNAが傷つくと細胞の正常なはたらきが阻害される可能性があるため、この修復作用も健康維持に非常に重要です。

あわせてNAD+の増加はサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)の活性化にも影響します。

NAD+を増やすには?

私たちの体内にあるNAD+を増やす方法として、ここでは3つを紹介します。

NMNサプリメントを活用する

NAD+を増やすには、その前駆体であるNMNをサプリメントで摂取する、という方法が有効です。

活用にあたって、まずはNAD+の生成について理解することをおすすめします。

体内におけるNAD+の生産には様々な要素が関わっています。

一つは食事から摂取する栄養素で、特にビタミンB3は生成の元となる重要な栄養素と言えます。

ところが、ただビタミンB3を摂取するだけでは、その全量がNAD+に変換されるわけではありません。

摂取したビタミンB3がNAD+に変換されるには、体内の特定の酵素の働きが必要で、その酵素の活性もまた、年齢とともに減少します。

しかもNAD+を直接経口摂取しても吸収されにくいのが現状です。

そんなNAD+の量を増やすために有用な手段のひとつが、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)の摂取です。

NMNは、ビタミンB3の一種であるニコチンアミドから生成され、体内でNAD+に変換されます。

つまり、NMNを摂取することで、間接的にNAD+の量を増やすことが可能となるのです。

例えば、NMNサプリメントのRefeelasは、1日分の3粒で125mgのNMNを取り入れることができます。

ここで問題となるのが、NMNをどのように摂取するかという点です。

NMNは一部の食品に含まれてはいますが、量が少ないため、食事だけで必要な量を補うのは困難です。

また、食品から摂取したNMNがすべてNAD+に変換されるわけではなく、その一部は他の物質へと変換されます。

そこで有効な手段となりうるのが、NMNをサプリメントとして摂取する方法です。

サプリメントは日常生活に取り入れやすく、効率的にNMNを体内に供給することができます。

NMNサプリメントは、体内のNAD+の量を増やす上で、ひとつの有効な手段と言えるでしょう。

サプリメントを摂取するメリットは、その便利さと効率性にあります。

必要な成分を確定量摂取することができ、また、食事に比べて消化・吸収が早いことから、効率よくNMNを体内に取り入れ、NAD+の量を増やすことが可能となるのです。

しかし、サプリメントを摂取する際には注意が必要です。

原則として栄養素の補足的な摂取源にすぎないため、健康的な食事や適度な運動、十分な休息を置き換えるものではありません。

あくまで基本的な生活習慣にプラスする形で利用するべきです。

適切な運動を心掛ける

NAD+を増やすには、適切な運動も有効です。

運動は、体を動かすために必要なエネルギーを生み出し、心肺機能を改善し、体重の維持や筋肉の強化にも貢献します。

また、運動は細胞内での化学反応を助け、私たちの体が生命を維持するための基本的な機能を支えています。

運動をすると、筋肉が働き、エネルギーを必要とします。

そのエネルギーを供給するために、体内ではNAD+という物質が使われます。

このNAD+は、体内でエネルギーを生み出す過程で必要とされる物質で、NAMPTという酵素によって生成されます。

運動することで筋肉から分泌される物質がNAMPTの活動を活性化し、結果としてNAD+の生成が促進されるのです。

NAD+は体内のエネルギー生産だけでなく、細胞の修復にも重要な役割を果たします。

DNAの修復過程で、NAD+はPARPという酵素を活性化します。

PARPの活性が高まると、NAD+が消費され、その結果NAD+の量が減少します。

しかし、適度な運動はDNAの損傷を抑制し、PARPの活性を調節するため、NAD+の消費を抑えることができます。

運動によりNAD+の生成が増えると、体のエネルギー生産が活性化され、それにより身体的な活動が円滑に行えます。

それによって運動能力が上がり、より活発に動くことができます。

これが運動とNAD+の増加が相互に影響を与える仕組みなのです。

なお運動をする際には、適度な強度と持続時間を心がけなくてはなりません。

無理な運動は体を疲弊させ、逆にNAD+の生成を妨げることがあります。

生体リズムを整える

NAD+を増やすには、生体リズムを整えることも有効です。

生体リズムは「サーカディアンリズム」、つまり概日リズムとも呼ばれ、生物が持つ約24時間周期の生理的・行動的リズムを指します。

私たちの覚醒・睡眠パターン、食欲の増減、体温の変動など、様々な生体機能がこのリズムに影響を受けています。

そして体内で行われるNAD+の生成も、このリズムに沿っているのです。

具体的には、昼間の活動時間にNAD+の量が増え、夜間に休息を取る時間帯にはその量が減少します。

この理由は、NAD+が細胞のエネルギー生成に重要な物質であるため、活動期に合わせてその生成が活発になると考えられています。

生体リズムを整えるために大切なことは、日々の生活習慣を見直し、生体リズムを支える環境を整えることが重要です。

まずは日光を適度に浴びること。

日光は体内時計をリセットする効果があり、特に朝の日光は体内時計を正確に保つのに強力な効果があります。

食事の内容とタイミングにも注意が必要でしょう。

さらに就寝前の生活習慣も見直すことが大切です。

まとめ

NAD+は私たちのエネルギー生成に欠かせない成分ですが、加齢とともにその量は減少します。

しかし、適切な生活習慣や栄養補給により、量を増やすことが可能とされています。

健康な体を維持するために、NAD+について知り、それを活用することが重要です。

これまでの研究からは、NAD+にはエネルギー生産、遺伝子修復、そして体全体の機能を高める可能性があることが示唆されています。

更なる研究と技術の進歩により、私たちの健康と活力を維持、向上させる新たな方法が明らかになることでしょう。

 

#NAD+ #アデノシン三リン酸 #トリプトファン

執筆者・監修者

代表取締役 島本 倖伸氏

株式会社CloudNine

代表取締役 島本 倖伸

真の健康と美しさを目指す企業として、株式会社CloudNineを創業。NMNの食薬区分の改正に合わせて、同年6月にいち早くNMNサプリメントのRefeelas(リフィーラス)を発売。累計出荷本数20万本以上と、国内におけるNMNのリーディングカンパニーの一社として、数多くの臨床研究を積極的に行っている。NMNサプリメントにおいて日本初の機能性表示食品となった「Refeelasサプリメント」、スキンケアの「Refeelasオールインワンジェル」を販売。NMNをブームから文化にしていくために、NMN製品の臨床研究を積み重ねている。

共同研究者

准教授 澤邊 昭義氏

近畿大学農学部応用生命化学科

准教授 澤邊 昭義

1991年近畿大学大学院工学研究科応用化学専攻博士後期課程修了(工学博士)。1991年米国マサチューセッツ工科大学 博士研究員、1993年近畿大学 農学総合研究所 助手、講師、助教授を経て、2000年近畿大学准教授(農学部)。 専門分野:生物環境学、生命資源化学。研究略歴:様々な植物から有用性物質の探索を行い、食品、化粧品へ応用した実績を持つ。近年は、機能性表示食品へ応用可能な新規関与成分の探索研究も実施中。