厚生労働省が提供する生活習慣病予防のための健康情報サイト「e-ヘルスネット」では、健康に関するさまざまな情報を確認することが可能です。
なかでも今回は、サプリメントと食物の相互作用について注目します。
サプリメントはあくまで補助として、食事で摂取しきれない栄養素を補うためのアイテムです。
しかし組み合わせる栄養素によっては、意図せぬ相互作用が発生する可能性が考えられるため、注意が必要となります。
この記事では、厚生労働省が提供する情報をもとに、食物との相互作用を考えるうえでの基本を解説したうえで、サプリメントをはじめとする健康食品における事例を解説します。
厚生労働省が解説する「健康食品」と「サプリメント」
「健康食品」の範囲は広く、法的な定義は存在しません。
一般的には、口から摂取する形で、健康の維持や増進に役立つとされる食品全般を指します。
広い意味では、サプリメントも健康食品に含まれます。
サプリメントの多くは、錠剤やカプセルの形をしており、必要な栄養素を選んで摂ることが可能です。
たとえばNMNのサプリメントRefeelasの場合、1日分の3粒で125mgの高純度NMNを摂取できます。
健康食品に関する制度としては、国が定めた基準を満たした食品に与えられる「保健機能食品制度」があります。
この制度は、「おなかの調子を整えます」や「脂肪の吸収をおだやかにします」など、特定の保健の目的が期待できる食品に対して、その機能を表示することを許可するものであり、消費者は自身の健康状態や目的に合った食品を選ぶ目安になるでしょう。
ただし平成21年9月1日に保健機能食品制度についての業務は消費者庁に移管されたため、2023年現在、厳密には厚生労働省だけの管轄ではありません。
食物とサプリメントの相互作用とは?
相互作用とは、二つ以上の要素が互いに作用し合い、影響を与える現象のことをさします。
食物とサプリメントにおける相互作用は、飲食物がサプリメントの効果や副作用に影響を及ぼし、その結果、サプリメントの効力や副作用が増大したり、逆に減少したりする現象のことです。
サプリメントだけでなく、食物と医薬品、食物同士でも相互作用が発生する場合があり、いわゆる「食べ合わせ」、「食い合わせ」、「飲み合わせ」などと呼ばれることもあります。
食物における相互作用の考え方
食物とサプリメントの相互作用について考えるとき、二つの方向性が重要となります。
食物がサプリメントの作用に与える影響
第一の方向性は「食物がサプリメントの作用にどのように影響を与えるか」ということです。
具体的には、飲食物や特定の食品成分がサプリメントの効果(主作用)にどのように影響を与えるか、また、副作用にどのように影響を与えるかという観点となります。
食物がサプリメントの効果を増強する場合、効きすぎの状態を引き起こすかもしれません。
逆に、食物がサプリメントの効果を減弱する場合、期待する効果を得られない場合もあるでしょう。
この視点については多くの事例で研究されています。
サプリメントが栄養素の利用や代謝に与える影響
第二の方向性は「サプリメントが栄養素の利用や代謝にどのように影響を与えるか」ということです。
サプリメントの主作用や副作用が栄養素の消化吸収や体内代謝に影響を与えることがあります。
この視点は、第一の方向性に比べて未解明の内容が多いため、実証や解明が待たれる部分だといえるでしょう。
食物における相互作用の種類
食物とサプリメントの相互作用は、作用機序の差異から大きく2つに分けることができます。
この理解は、サプリメントの適切な使用や食事の管理において大切となります。
薬物動態学的相互作用
薬物動態学的相互作用は、食品成分が医薬品の吸収・分布・代謝・排泄の過程に影響を与えるものであり、これはサプリメントにも当てはめることが可能です。
食事の有無や特定の食事によって医薬品の吸収量や吸収パターンが変化し、薬物血中濃度が変化する場合や、食品中の特定成分が医薬品の代謝に影響を与える場合が考えられます。
例えば皮膚真菌症治療薬であるグリセオフルビンは、脂質の多い食事を摂取した後に服用すると、その生物学的効力が2倍以上となることがあります。
これは、食事の有無や特定の食事が、薬の吸収量や吸収パターンに影響を及ぼす例です。
血圧降下薬であるジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬は、グレープフルーツジュースを同時に摂取すると、血中濃度が上昇し、効果が強く出る状態になることがあります。
これは、食品中の特定成分が、薬の代謝に影響を与える例です。
さらに、低栄養状態の場合、血中たんぱく質濃度が低下することにより、遊離薬物濃度が上昇し、肝臓の薬物解毒代謝活性が低下することでも、薬の効きすぎを招く可能性があります。
これは、栄養状態の変化により薬の体内分布が変化する例です。
薬理学的相互作用
薬理学的相互作用は、食品成分が医薬品の効き方に影響を与えるものであり、サプリメントでも同様に考えることができます。
食品成分と医薬品が同じ生理作用を持つ場合にその作用が増強することがあるほか、食品成分と医薬品が相反する作用を持つ場合にその作用が減弱することがあるのです。
例えば、抗血栓薬ワルファリンの効果は、ビタミンKの働きを阻害することによってもたらされます。
しかし、ビタミンKを多く含む食品(納豆やブロッコリーなど)を摂取すると、ワルファリンの効果が減弱する可能性が考えられます。
これは、食品成分と薬物が相反する作用を持つ例です。
また、アルコールを摂取すると向神経薬や睡眠薬の作用が増強したり、甘草によって降圧薬作用が弱まったりすることがあります。
これは、食品成分と薬物が同じ生理作用を持つ場合の例です。
食物に影響する特定成分
サプリメントをはじめとする健康食品の利用は、自己管理の一環として、また医療費削減の観点からも重要な位置を占めています。
しかし、健康食品と薬物との相互作用は、十分に理解されていない場合が多く、予期せぬ副作用を引き起こす可能性があります。
ここでは、厚生労働省の解説にもとづき、健康食品と薬物との相互作用の具体的な事例を解説しましょう。
血液凝固抑制作用を持つ成分を含む健康食品と野菜類
血液をさらさらにする食品として知られる一部の健康食品や野菜類は、血小板凝集抑制薬や抗血栓薬との相互作用を起こす可能性があります。
例えばイチョウ葉エキス、にんにく、たまねぎ、ノコギリヤシ、EPAやDHA、ビタミンE、さらにはサリチル酸を多く含むイチゴ、トマト、きゅうり、みかん、ぶどうなどを摂取すると、血液が薄くなりすぎて出血傾向が亢進する可能性が確認されました。
コエンザイムQ10
コエンザイムQ10(通称:CoQ10)は、細胞のなかにあるミトコンドリアに蓄積される化合物の一種で、血中コレステロールを下げるスタチン系薬剤の副作用である横紋筋融解症を予防する可能性があります。
スタチン系薬剤の副作用は、CoQ10の合成力低下が原因とされており、CoQ10の摂取によって副作用が予防または軽減される可能性があります。
オレンジジュース
オレンジジュースとβ-遮断薬(セリプロロール・アテノロール)との併用は、薬の生物学的効力が減少し、薬効が減弱する可能性があります。
同様に、クランベリージュースと抗血栓薬ワルファリンとの併用は、薬効が増強したことによる消化管出血も報告されています。
クランベリージュース
ワルファリンとクランベリージュースの組み合わせは注意が必要です。
ワルファリンを服用している人がクランベリージュースを飲むと、ワルファリンの効果が強くなりすぎる可能性があります。
クランベリージュースの成分がワルファリンを分解する酵素(CYP2C9)を阻害し、結果としてワルファリンの効果が増強され、消化管出血を引き起こすかもしれません。
カモミール
カモミールはエストロゲン作用を持っており、経口避妊薬の効果を弱める可能性があります。
さらに薬物代謝酵素(CYP1A2、CYP3A4)を抑制することにより、酵素で代謝される薬物において、薬効が増強するおそれもあるでしょう。
クレアチン
クレアチンは瞬発力が求められるスポーツをはじめアスリートらに愛用される成分です。
しかしクレアチンの多量摂取は、腎毒性を持つ薬物との相互作用により、腎障害が悪化する可能性があるため、注意が必要でしょう。
オクタコサノール
オクタコサノールは、パーキンソン病患者には摂取が禁忌とされています。
特に、レボドパ・カルビドパを服用している場合は、オクタコサノールの摂取は避けるべきです。
ビタミンB6
ささみやヒレ肉、赤身の魚などに多く含まれるビタミンB6は、抗てんかん薬のフェニトインの生物効力を約45%低下させる可能性があります。
ほかにも抗結核薬のイソニアジドによる末梢神経障害を予防する効果も報告されており、これはイソニアジドがB6の消費を促進し欠乏症を引き起こすことによるものです。
葉酸
野菜や肉類などさまざまな食品に含まれる葉酸は、抗腫瘍薬のフルオロウラシルやカペシタビンの排泄を遅延させる可能性があります。
また抗腫瘍・免疫抑制・抗リウマチ薬のメトトキサレートの副作用を軽減する効果も確認されました。
葉酸の栄養代謝に影響を与える薬物も多く、特に抗てんかん薬や利尿薬、パンクレアチンなどが葉酸の吸収や代謝に影響を及ぼすことが知られています。
ビタミンC
さまざまな果物や野菜、じゃがいもなどに含まれるビタミンCは、女性ホルモンのエチニルエストラジオールの生物効力を60%程度上昇させる可能性があります。
さらに極端な多量摂取により、抗凝固薬のワルファリンの作用を減弱させることも報告されました。
ビタミンD
ビタミンDはキノコ類や魚類などに多く含まれます。
抗結核薬のリファンピシリン・イソニアジドは、小腸でのビタミンDの水酸化を阻害し、活性型ビタミンDの血中濃度を低下させる可能性があり、注意が必要です。
ミネラル類
ミネラル類は、特に多価陽イオンと薬物との間で不溶性キレートを形成し、薬物の吸収を阻害する事例が多く報告されています。
テトラサイクリン系抗菌剤やキノロン系・ニューキノロン系抗菌剤との相互作用が知られています。
また、カルシウムだけでなく、鉄・マグネシウム・亜鉛などのミネラルも同様の注意が必要です。
まとめ
厚生労働省の情報を基に、サプリメントと食物の相互作用について詳しく解説しました。
現代では研究が進んだことにより、ビタミンB6、葉酸、ビタミンC、ビタミンD、ミネラルなど、様々なサプリメントが食物や医薬品などとの相互作用を持つことが明らかになっています。
効果を増強したり、逆に減弱したりといった予期せぬ作用が確認されている組み合わせは、原則として避けるべきです。
とはいえ、すべての組み合わせを事前に把握することは難しいのが現状です。
サプリメントや健康食品を利用する際は、かかりつけの医師や薬剤師と相談することでトラブルを防ぎやすくなるでしょう。
特に持病がある方、なんらかの薬を飲んでいる方、健康に不安を抱える方は必ず事前に相談することをおすすめします。
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執筆者・監修者
株式会社CloudNine
代表取締役 島本 倖伸氏
真の健康と美しさを目指す企業として、株式会社CloudNineを創業。NMNの食薬区分の改正に合わせて、同年6月にいち早くNMNサプリメントのRefeelas(リフィーラス)を発売。累計出荷本数20万本以上と、国内におけるNMNのリーディングカンパニーの一社として、数多くの臨床研究を積極的に行っている。NMNサプリメントにおいて日本初の機能性表示食品となった「Refeelasサプリメント」、スキンケアの「Refeelasオールインワンジェル」を販売。NMNをブームから文化にしていくために、NMN製品の臨床研究を積み重ねている。
共同研究者
近畿大学農学部応用生命化学科
准教授 澤邊 昭義氏
1991年近畿大学大学院工学研究科応用化学専攻博士後期課程修了(工学博士)。1991年米国マサチューセッツ工科大学 博士研究員、1993年近畿大学 農学総合研究所 助手、講師、助教授を経て、2000年近畿大学准教授(農学部)。 専門分野:生物環境学、生命資源化学。研究略歴:様々な植物から有用性物質の探索を行い、食品、化粧品へ応用した実績を持つ。近年は、機能性表示食品へ応用可能な新規関与成分の探索研究も実施中。