「サーカディアンリズム」は生物の体内時計に関わるリズムです。
24時間周期で変動し、体温やホルモンの分泌、眠りや覚醒などにも影響しており、私たちの健康にも大きく関係するといえるでしょう。
この記事では、サーカディアンリズムの基本として、厚生労働省が提唱する定義や、サーカディアンリズムを整えるヒントを解説します。
サーカディアンリズムとは?
「サーカディアンリズム」とは、ラテン語で「おおよそ1日」を意味し、生物が持つ24時間周期のリズムのことです。
「概日リズム」とも呼ばれます。
私たちの日常生活に深く関わっており、睡眠の周期や体温、自律神経の働き、免疫系の動き、ホルモンの分泌など、多くの生体機能を調節しています。
生物体は、地球の自転に伴う24時間の昼夜変動に対応するため、およそ1日周期で体内環境を調節する能力を持っています。
このリズムは、人間においても体温やホルモンの分泌など、生命活動の基本的な機能に影響を与えます。
サーカディアンリズムは、光や温度の変化がない状態でも維持されることから、生物体が内部に時間を計測する機構(24時間周期のリズム信号を発振する機構)を持っていることが明らかになりました。
この内部時計は、哺乳類では脳の視床下部に位置する視交叉上核に存在することがわかっており、「体内時計」と呼ばれています。
体内時計とは?
体内時計とは、様々な生体リズムを調節する機構のことです。
地球の自転によるおよそ24時間周期の昼夜変化に同調して、ほぼ1日の周期で体内環境を積極的に変化させます。
これは「生物時計」とも呼ばれ、生物が生まれつき備えている仕組みです。
人間の体内時計は、1日きっかり24時間ではなく、多少ずれているのが基本です。
多くの人は24時間よりも長い周期で、一部の人々は逆に24時間よりも短い周期で動いています。
そのため、私たちの体内時計を地球の24時間の日夜リズムに合わせるための調整システム、つまり「同調機構」が存在します。
この同調機構により、季節による日の長さの変化や、異なる時間帯への旅行による日夜リズムの変化に対応することができるのです。
哺乳類、人間も含めて、は網膜から体内時計への直接的な神経のつながりがあり、これにより目から得た光の情報が体内時計に伝えられます。
人間の場合、朝の強い光は体内時計を進め、夜の光は体内時計を遅らせます。
サーカディアンリズムの仕組み
サーカディアンリズムはどのような仕組みで動いているのでしょうか。
そのメカニズムを簡単に解説します。
研究により、サーカディアンリズムは、光や温度の変化がない環境でも機能することが判明しました。
つまり、生物それぞれがもとから持っている内部的なリズムで、それが体内時計となり、私たちの生活リズムを規定しています。
体内時計の司令塔とも言えるのが、私たちの脳に存在する視交叉上核という部分です。
ここには、光の情報を解釈する神経細胞が集まっており、目から得られる光の情報を基に活動を調整します。
この神経細胞の働きは、体内の他の部位にも影響を及ぼし、全体のリズムを整える役割を果たします。
例えば、夜が訪れると、これらの神経細胞はメラトニンというホルモンの分泌を促進します。
メラトニンは睡眠を誘う効果があり、その分泌により私たちは自然と眠りにつくことができます。
そして朝が来ると、覚醒を助けるホルモンであるコルチゾールの分泌が促されます。
これにより、私たちは朝、自然と目覚め、新たな一日を迎える準備をすることができるのです。
さらにサーカディアンリズムにはさまざまな要素が影響し、どのような生活を送るかによって細かく変化します。
この私たちの心身の働きを調節する要素を「同調因子」と呼びます。
同調因子に含まれる要素は多種多様です。
なかでも特に重要なものとして、「光」、「時間を示すもの」、「日常の活動や学習などのルーチン」、「食事」、「運動」などが挙げられます。
これらの要素が組み合わさることで、本来人によってやや異なる周期を持つサーカディアンリズムが調整され、私たちが日々の生活を規則正しく過ごしやすくなるのです。
サーカディアンリズムが乱れる原因としては、時差ぼけや夜勤などのシフトワーク、そして不規則な生活習慣が主な要因となります。
食事での栄養不足や特定の栄養過多、運動不足なども影響します。
これらの状況は、体内時計と外界の時間との間にずれを生じさせ、結果としてサーカディアンリズムが乱れる可能性もあるでしょう。
同調因子に含まれる要素は、もともと私たちの健康と密接に関わっている要素でもあります。
よってサーカディアンリズムを理解し、整えることが健康維持につながると考えることができます。
サーカディアンリズムの影響
サーカディアンリズムは、「体温」や「血圧」、「睡眠」、「ホルモンの分泌」など、私たちの体の様々な機能に大きな影響を与えています。
例えば、体温は一日の中で一定ではなく、サーカディアンリズムに従って変動します。
同様に、血圧も日中と夜間で異なる傾向があり、これもサーカディアンリズムの影響を受けているのです。
さらにサーカディアンリズムは、私たちの生活における多くの生理機能に影響を及ぼします。
これは心臓の働きや消化器官の機能、さらには免疫システムの動きにも関わっています。
このリズムが乱れると、さまざまな健康問題が引き起こされる可能性があります。
ただし同じ生活を送っているからといって、全ての方に同じ影響が出るわけではありません。
もし体調に何らかの違和感を覚えたら、まずはかかりつけの医師への相談を検討することをおすすめします。
サーカディアンリズムと睡眠
サーカディアンリズムと睡眠も、密接に結びついています。
睡眠は、私たちが覚醒と交互に経験する生理的な状態で、サーカディアンリズムをはじめとする要素に従って変動するのです。
睡眠時間は、脳や身体の修復、成長、そしてエネルギーの再充填に必要な時間となります。
もし睡眠の質が低下したり、睡眠時間が不足したりと、健康や日々のパフォーマンスに悪影響を及ぼすことも考えられます。
そのため、サーカディアンリズムと睡眠の関係性を理解することは、自分自身の生活リズムや睡眠習慣を改善するためにも重要です。
そもそも睡眠は、恒常性維持機構と体内時計機構の2つの機構によって制御されています。
恒常性維持機構は、生物が、一定の状態で体内環境を維持し続けるための機構です。
睡眠不足や長時間の覚醒によって生じる疲労感に反応し、私たちを睡眠に導きます。
そして体内時計機構は、サーカディアンリズムにあわせて体内環境を変化させる機構です。
一日の中で特定の時間になると、体が自然と眠気を感じる機能を持ちます。
例えば、普段の就寝時間になると、体内時計機構が働き、自然と眠気を感じるようになります。
例えば夜勤後などの疲労感がピークに達しているにも関わらず、なかなか眠れないのは、体内時計機構が働いているからです。
この2つの機構が相互に関連しながら、睡眠の質、量、そしてタイミングを制御しています。
また、サーカディアンリズムは、特に睡眠に関連するホルモン、メラトニンとセロトニンと深く関わっています。
メラトニンは「睡眠ホルモン」とも呼ばれ、夜間に分泌が増えるホルモンです。
このホルモンの分泌は光の影響を強く受け、日中は光によって抑制され、夜になると分泌量が増えます。
メラトニンが不足すると、寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めたり、などの睡眠障害が起こりやすくなります。
セロトニンは、日中に光を浴びることで分泌量が増えるホルモンです。
このホルモンは、心のバランスを保つ役割を果たし、セロトニンが不足すると、気分が落ち込んだり、感情のコントロールが難しくなったり、場合によっては何らかの症状を引き起こすこともあります。
睡眠の仕組みを深く理解することで、さらなる生活の質の向上を目指しやすくなるはずです。
サーカディアンリズムの調整方法
サーカディアンリズムは、日々の生活習慣に大きく影響を受けます。
ここでは、そのリズムを整えるために、日常生活の中で意識的に取り組むべきポイントを詳しくご紹介しましょう。
昼間は明るい光を浴び、夜は暗くする
サーカディアンリズムは光に強く影響を受けます。
特に、昼間は自然光をたっぷりと浴びることが重要です。
自然光は体内時計をリセットし、覚醒状態を維持するのに役立ちます。
外出が難しい場合でも、窓から入る光を利用したり、人工的な明るい光を使用したりすることで、体内時計を整えることが可能です。
対して夜は光を避けることが大切です。
特にデジタル機器が発するブルーライトはメラトニンの分泌を抑え、睡眠を妨げる可能性があります。
そのため、できれば就寝1時間前からはスマートフォンやパソコンなどの画面を見るのは避け、寝室は暗くして快適な睡眠環境を整えるようにしましょう。
規則正しい生活リズムを作る
起床時間や就寝時間を毎日同じにすることで、サーカディアンリズムを安定させることができます。
また、食事や運動も一定の時間帯に行うことが望ましいです。
規則正しい生活リズムは、体内時計を整え、健康を維持するための基本となります。
まずは毎日の生活を記録し、自分がどのようなリズムで生活する傾向にあるかを知ったうえで、現在のリズムをそのままキープするほうがよいか、それとも調節したほうがよいかを判断しましょう。
ただし生活リズムの極端な変更は難しい場合もあるため、無理のない範囲でおこなうのが基本です。
例えば食事のタイミングを一定に保つことも、サーカディアンリズムに影響を与えます。
特に朝食は、体内時計のリセットと正常なリズムの維持に役立ちます。
朝食は起床後1時間以内に、夕食は朝食から12時間以内にとるのがおすすめです。
また、夜9時以降は脂が少ないものや野菜が多いものなど、軽い食事を選ぶこともポイントとなります。
ただし適切な食事量は人によって異なるため、自分にあった栄養バランスを理解することからはじめましょう。
適量のNMNを摂取する
サーカディアンリズムの調整には、適量のNMNの摂取も有効です。
起床や就寝などの日常生活に深く関与するサーカディアンリズムに従って、体内の物質「NAD+」の量も変動することから、NAD+の変動が各種臓器機能のリズム的な制御に影響すると考えられています。
NAD+は、酵素の働きを調整し、体の各臓器の機能をリズムに合わせて変化させる役割を果たす物質です。
人間の場合、活動時間は主に日中で、その間にNAD+の量が増え、夜間には減少します。
そして加齢によりNAD+の量は全体的に減少することから、一日の周期で見ると、その変動幅が加齢とともに縮小する傾向にあります。
さらにNMNはNAD+の前駆体であり、摂取することでNAD+の生成を促進できる物質です。
そのためNADの量が増える活動時間、つまり日中にNMNを補給することで、若い頃のように変動幅が大きい状態に近づけることが可能だと考えられています。
ただしNMNをただ摂取すれば解決するわけではありません。
まずは、睡眠、食事、運動を通じて健全なサーカディアンリズムを維持したうえで、NADの量の変動幅を保つことが重要です。
まとめ
サーカディアンリズムとは、生物の体内時計によって制御される約24時間のリズムのことであり、適切なリズムを保つことで、健康の維持が期待できます。
調整するには、日光や食事、運動などの要素がポイントになります。
私たちの生活に関わるサーカディアンリズムの重要性とその仕組みを理解したうえで、無理のない範囲にて生活習慣を見直すことが大切です。
#サーカディアンリズム #概日リズム #体内時計
執筆者・監修者
株式会社CloudNine
代表取締役 島本 倖伸氏
真の健康と美しさを目指す企業として、株式会社CloudNineを創業。NMNの食薬区分の改正に合わせて、同年6月にいち早くNMNサプリメントのRefeelas(リフィーラス)を発売。累計出荷本数20万本以上と、国内におけるNMNのリーディングカンパニーの一社として、数多くの臨床研究を積極的に行っている。NMNサプリメントにおいて日本初の機能性表示食品となった「Refeelasサプリメント」、スキンケアの「Refeelasオールインワンジェル」を販売。NMNをブームから文化にしていくために、NMN製品の臨床研究を積み重ねている。
共同研究者
近畿大学農学部応用生命化学科
准教授 澤邊 昭義氏
1991年近畿大学大学院工学研究科応用化学専攻博士後期課程修了(工学博士)。1991年米国マサチューセッツ工科大学 博士研究員、1993年近畿大学 農学総合研究所 助手、講師、助教授を経て、2000年近畿大学准教授(農学部)。 専門分野:生物環境学、生命資源化学。研究略歴:様々な植物から有用性物質の探索を行い、食品、化粧品へ応用した実績を持つ。近年は、機能性表示食品へ応用可能な新規関与成分の探索研究も実施中。